まだ15m登れない人に

 皮手袋に滑り止めをつけて10mに達しないのなら,あなたは体重に対する筋力が絶対的に不足しています。

 懸垂は,何回できますか?おそらく20回前後でしょう。

 登り方を覚えればもう少し伸びるのでしょうが,とりあえず筋力をつけましょう。

ウエイトを使ったトレーニングや鉄棒での懸垂などで身体全体を鍛えましょう。
 
腹筋も忘れずに鍛えることが重要です。

  
 筋力トレーニングについて私がここでとやかく言うより専門書を読んだほうがいいでしょう。私が気を付けているのは,トレーニングをハードに行なった時ほどタンパク質を多く摂ることと,良く寝ることです。

  そうすることで壊れた筋繊維をより太く,強いものに修復することが出来るのです。 
  文献によると一般人のタンパク質摂取量は体重1キロ当たり1グラムだそうです。

 筋肉量を増やしたいならその倍が目安だそうで,普通の食事だけでは不足してしまい,せっかくのトレーニングが無駄になってしまいます。
  市販のプロテインなどを利用するのもいいでしょう。


 さて,登り方ですが低いところで壁を蹴ると,身体が壁から離れて登れないままロープにぶら下がる時間が長くなり,体力の無駄遣いです。

身体は,リズムとバランスをとるだけで,壁に沿わせるように下に蹴ります。

膝を引きつけた反動を利用して同じ側の腕を伸ばすのですが,手と足をテンポ良く動かすことが重要です。

スキップをするような感覚ですが,これはすぐにつかめると思います。

ところで,皆さんが途中で登れなくなってしまうのは,握力を消耗し,ロープが握れなくなってしまうからでしょう。

しかし,短い時間で登りきれるようになると握力や握り方はあまり関係なくなってきます。私の握力は新任の頃からほとんど変わらず60kg前後です。


 今の皆さんがより高く登るためには,ロープを軽い力で握り,握力をセーブすることが必要です。

そのためには,2本のロープを縦に並べ,指の関節と付け根部分で挟み,決して手のひら全体で握らないこと。

ロープを引き付けるときに人差し指でひねってロックさせる気持ちが大切です。限界が近づき,引き付ける力が弱くなってくると,両手で一気に引き付けて身体が無重力で停止する瞬間に腕を伸ばし,確実にロープを握らねばなりませんが,この時に重要なのは足の引きつけと腕との同調で,腹筋の強さが物を言う場面です。

こうしてみると,懸垂で反動をつけて上がるのも,ロープ登はんの良い練習方法かも知れません。


 13mくらい登れるようになったら15m登れる日は明日かもしれません。

しかし,訓練を始める前から「どうせ登れないし,ぶら下げられて苦しいだけだ」と考えているうちは決して完登できないでしょう。

どんな訓練や勉強でも向上心がないと,ただ苦痛を感じるだけで力はつきません。

無駄な時間を過ごす前に一刻も早く意識を変える必要があります。

私も,新隊員の頃は「現場で使うわけでもないのに,何になるんだ」と斜に構えて訓練をばかにしていました。

しかし,どの種目についても訓練することは技術,体力,精神力の向上につながり,自分自身の能力の向上は,我々の本分である市民サービスの向上につながります。

訓練を通じて自分を磨いてください。


  ひとは,タイムや順位にしか目を向けないものですが,本当に大切なことは目に見えないところにあるものです。

重要なのは,どれだけ真剣に取り組み努力したかで,結果はあとからついてくるおまけみたいなものです。

この段階の登り方について考えてみましょう。

私は,懸垂が30回出来るようになった頃に15m登れたのですが,もちろん力がすべてではありません。

いつ登っても13〜14m止まりだったある日,先輩が確保ロープを少し引っ張ってくれたら妙にリズムが合って,すいっと15mまで登れたのでした。

その時,何かがつかめた感じがしました。

それ以来,悪い魔法でも解けたかのように1本目は必ず登れるようになったのでした。この変化は劇的でした。

(このような突然のレベルアップは,その後何度か私に訪れました)。

皆さんが登れないのは,腕力に頼って登っているからでしょう。

顔の真中をロープが通って,両肩が地面と水平を保っているような登り方では,手幅が小さくなって効率が悪く,すぐにばててしまいます。

肩からロープを取りに行く感じで,膝の反動を使ってなるべく手幅を大きくして,アクションを大げさにしてみましょう。

腕を伸ばしたときに意識して下がったロープの左右に頭を出すように振ると感じがわかると思います。

考えてみると,12mでもマンションの4階までは腕だけで登れるのですから,一般の人から見れば,あなたは既に忍者かスーパーマンのような存在に見られるでしょう。

しかし,この種目は15mを登るタイムを競うものとなっていますので,登れなければ話になりません。

もう一歩です。

前向きな気持で努力しましょう。