20秒以上かかる人に


とりあえず15m登ることが出来て訓練を無難にこなせるようになると,安心してそこで落ち着いてしまいがちです。
 私も,この頃は「局内突破の見込みがない」と小隊長の勧め(命令?)で梯子登はんをやらされたこともありました。
私は,救助隊員なら誰もが訓練次第で20秒切って登れるようになると思ってます。

「やってみよう」という気持になるかどうかだけなのです。

これから先は,本人のやる気にかかっていて,トレーニングも専門的なものとなっていきます。

実際に登ることが一番のトレーニングになるのでしょうが,ウェイトトレーニングを併用することで,より効果が上がるでしょう。

効率よくトレーニングをするために,まずロープ登はんに必要な筋肉を知りましょう。

それには,上半身裸になって,鏡の前で実際にロープを引く格好をやってみればよくわかります。

引く際の,姿勢にもよるのですが,広背筋,大胸筋,上腕三頭筋の脇に近い部分などが緊張しているのがわかると思います。

また,鏡では見えませんが,肩甲骨周辺の筋肉も使っています。(腹筋も膝を引き付けるために必要です。)

これらの筋肉をトレーニングでより太く強靭なものに作り変えるのです。

様々な方法がありますが,私は専門書を参考にアレンジしたり,自分なりにいろいろ考え出したりしました。(失敗もたくさんありましたが)。

懸垂は,継続して続けました。ウエイトをつけたり,限界の回数に挑戦したりいろいろな方法を試しました。

最大筋力を強くするために片手で懸垂をやってみるのもいいでしょう。出来ない人は両手で引き付けておいて,片手を離してじっと耐える練習をやるといいのですが,筋肉にかなり負担がかかりますので怪我をしないように気をつけてください。

登はんに必要な筋肉を有効に鍛えるという意味では「おもり上げ」は効果的だと思います。

私にとって20秒を切ることは,かなり大変なことでした。

24秒くらいのタイムだった頃に「来年は,やってやるぞ」と思い立って夏からトレーニングを始め,小隊ぐるみで訓練に励み,20秒が切れたのは3月末の事でした。
 20秒の壁の厚さに内心かなり焦ったものでした。

しかし,その後は,それまで培った力が爆発するようにタイムが縮まって,2週間後には17秒台で登れるようになっていました。

けれど,その年の局内記録会は,17.16秒でも突破することができませんでした。

次に,20秒を切るための登り方について考えてみましょう。

なんとか15m登れる人と,20数秒の人では力の差は歴然です。

やっと登れるという人は,10mあたりから壁を蹴って,その反動を使って登っているのではないでしょうか。

確かに壁を蹴ると手幅も大きく取れて楽に登れますし,現段階ではそのほうがタイムもいいでしょう。しかし,これから自分の記録を良くしたいのなら,出来るだけ壁を蹴るのを我慢しましょう。(きついのはわかります)。

2本目,3本目のこともつい考えてしまうでしょうが,明日の自分のために,こらえて頑張ってください。(本来,壁を蹴る事は減点項目なので失格になってしまいます)。

今のレベルでタイムを縮めるためには,手幅を大きく取ることが必要です。

そのためには,引き付けた下の腕1本で体重を支える(実際はほんの一瞬ですが)筋力が必要です。

  また,前にも書きましたが,意識してアクションを大きくし,全身を使って登るように心がけましょう。トカゲが走るイメージです。

そうするうちに,次第に蹴らずに登れるようになり,必ずタイムも縮まってきます。

20数秒で登れるようになったら,自分のどこが悪いのか改めて考えてみてください。

速い人と自分の登りをビデオで比べてみるのがいいと思います。

手数がまだずいぶん多いと思いますし,後半のスピードダウンが目立つはずです。

この段階での私は,手数を減らすことに重点を置き,タイムを度外視して精一杯腕を伸ばす登り方で練習を行ないました。

肩から取りに行く感覚を覚えるため,手ごろな棒を案山子のように肩に担いでフォームを矯正したりもしました。

それに加えて,筋力アップのためにウエイトを付けての登りも繰り返しましたし,ウェイトトレーニングにも励みました。

ちなみに,懸垂は40回ほど出来るようになりましたし,片手懸垂も4〜5回出来るようになりました。

登り方に各自の個性が出てくるのが20秒前後です。私の登る型もこの頃決まったようです。

このころの私の手数は34歩くらいでした。現在は,約30歩ですから,まだまだ登り方に無駄が多く,味わうように登っていたようです。

20秒切れたのは,筋力の向上により後半の粘りが出てきたからだと思います。

20秒切った途端に17秒まで縮まったのですが,その後何年もの間,職場の異動や怪我のため訓練も,大会出場も出来ず,記録が伸びることはありませんでした。